何故エヴァではバッハが多用されるのか





何故エヴァではバッハが多用されるのか





お久しぶりです。塩ラーメンです。
今回はエヴァンゲリオンという作品を、使用された楽曲の観点から考えてみたいと思います。J.S.バッハの音楽性と、庵野さんのエヴァへの姿勢について。早速いきましょう。



・実は有名ではなかったバッハ

ヨハン・セバスチャン・バッハ(J.S.バッハ)と言えば、後の西洋音楽の基礎を作った作曲家であり、〝音楽の父〟とまで呼ばれる存在ですが、曲を作っていた当時はそこまで有名ではありませんでした。
J.S.バッハ (Wikipedia)

1700年代後半において、「バッハ」とはカール・フィリップ・エマヌエル・バッハ、もしくはヨハン・クリスチャン・バッハのことで、J.S.バッハは生前も死後もあまり注目されなかったのです。

しかし、息子たちやモーツァルト、ベートーヴェン、ショパンなどの音楽家たちによって彼の音楽は受け継がれ、1829年、メンデルスゾーンのベルリン公演にて、オーケストラアレンジでの「マタイ受難曲」が演奏されてからJ.S.バッハは再評価されるようになりました。


バッハが生きた時代に有名だった作曲家と言えばヘンデルでしょう。「メサイア」より “ハレルヤ・コーラス” はエヴァの劇中でも使われています。

あるいは、ヘンデルとチェンバロの腕を競い合ったと言われるスカルラッティも当時有名な作曲家でした。

聴いてみていかがでしたか?ヘンデルもスカルラッティも華やかでキラキラしていますよね。
バッハの時代に有名だった彼らは、いわゆる〝商業音楽家〟であると言えます。つまりキャッチーで大衆に聴かれることを意識した、今で言うポップミュージックのような立ち位置であったのでしょう。

対してバッハは、極めて難解な音楽の限界に挑戦するような曲や、神や教会のための曲を作るというスタイルをとっており、彼らとは音楽への姿勢が全く違ったわけです。バッハの音楽はポップと言うより、どちらかと言うと重厚感のある印象でしょう。



・エヴァの目指すもの

では、エヴァという作品、そして庵野秀明という人についても考え直してみましょう。元々「新世紀エヴァンゲリオン」の時は、ビジネスのための作品と言うより、面白いアニメを作ろうとして制作されていました。1993年の時点での企画書を見てみましょう。

(中略)

https://wiki.evageeks.org/Neon_Genesis_Evangelion_Proposal より


特に最後のページ。作品の明確なテーマと、アニメーションとしての面白さを追求したいという意図が、この企画書から伝わってきます。

新劇場版からは、アニメーターの生活のため、ビジネスとしてのアニメづくりも意識したようですが、「新世紀」の頃と変わらぬ志で制作にあたったことは〝庵野秀明総監督『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』所信表明〟から分かります。
(以下、抜粋)

アニメーション映像が持っているイメージの具現化、表現の多様さ、原始的な感情に触れる、本来の面白さを一人でも多くの人に伝えたいという願い。
疲弊する閉塞感を打破したいという願い。
(中略)
閉じて停滞した現代には技術論ではなく、志を示すことが大切だと思います。
本来アニメーションを支えるファン層であるべき中高生のアニメ離れが加速していく中、彼らに向けた作品が必要だと感じます。
現状のアニメーションの役に少しでも立ちたいと考え、再びこのタイトル作品に触れることを決心しました。



・なぜバッハが多用されるのか

さて、エヴァという作品ではなぜバッハの曲が多用されるのでしょうか。
キリスト教の音楽だからバッハを使っている、という解釈も勿論できます。しかし、これまでのことを踏まえると、バッハも庵野さんもビジネスのためではない質の高い作品づくりを目指し、その表現の限界に挑戦していると言えます。
すると、エヴァでバッハの曲がよく使われるのは、当然とも言えるわけで、選曲にはそうした理由があるのだろうと私は考えています。

結論。バッハはビジネスのためではなく、神や教会のために質の高い音楽を作ろうとした。庵野さんもビジネスのためではなく、アニメ業界のために質の高い作品を作ろうとした。両者の共通点はそこにあり、エヴァの作中でバッハが多用されるのは、庵野さんが彼の音楽への姿勢を自身のアニメづくりの姿勢と重ねているからではないか。



・おわりに

ということで、今回は〝音楽の父〟バッハと、〝現代アニメの父〟庵野さんという偉大な2人の共通点を見てきました。皆さんの解釈もぜひお寄せください。

あと、最後に言わせて頂きたいことがありまして…。バッハやベートーヴェンの曲をエヴァのサントラだと思っている方、結構いますよね。エヴァで使われている曲からでも良いのでぜひクラシックを聴いてください。

ちなみに、世界で最も美しいと評されるモーツァルトの「Ave verum corpus」ですが、高校時代の音楽の授業で気が滅入るほど繰り返し練習した思い出があり、シンエヴァで流れた時はびっくりして映画館で声が出そうになった記憶があります。しかし今聴くと改めて美しい曲だなと思います。



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(てな訳で、後はヨロシク)



画像引用:
©khara/Project Eva. 
©カラー/EVA制作委員会
Wikipedia

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